約 301,243 件
https://w.atwiki.jp/zecre/pages/138.html
http //windom.ran-maru.net/3.html 全18ページ 登場キャラクター ナナミ ミナセ 絶 夕姐 フミキ チヨジ あらすじ ココロを閉ざす少女、ナナミ。 だが、ついにミナセの説得に負けて 隠していた「自傷(リスカ)痕」と 「傷(オモイデ)」をさらけだす・・・。 それこそ、彼女が赤羊であることの証。 今、孤独のなかに「連帯(ツナガリ)」が生まれる・・・。 解説 絶対加速クレッシェンドで最初に描かれた話。 ミナセの「君も赤羊なの?」と言うセリフを描きたかったためにこの物語は始まった。
https://w.atwiki.jp/euphshaker/pages/69.html
「凄い……、この機体」 白き虎が、その橙色の双眸が、隔壁をへこませ蹲る赤い竜を見据える。そのコクピットで、リエル・フィアットは驚愕していた。 何もかもが違う。この白い虎から感じる生命力、無造作な一撃で竜を吹き飛ばしたパワー。その全てが、数瞬前まで操っていた狼の身体とは比べ物にならないほど強化されていた。 「……いける、これなら!」 赤い竜が、攻撃を再開した。先ほどと同じ、両前脚からの雷撃。反射的に、リエルは操縦桿を横に倒し 「――……っう!?」 た瞬間、側頭部を思いっきり殴られたような衝撃。リエルの操縦に『忠実に』反応したワイツタイガーが凄まじいまでの瞬発力でサイドステップを繰り出し、それにより発生したGがリエルをモロに襲ったのだ。 (……前言撤回、何この暴れ馬!?) 歪む視界を必死に保ち、リエルは竜との距離を詰める。ついさっきあれほど苦しめられた雷撃が、今はかすりもしない。 「はぁっ!!」 懐に飛び込み、爪を叩き込む。竜が仰け反った。間髪入れず逆の爪。竜の巨体が浮き上がる。 「っでえい!!」 頭を下に潜り込ませ、そのまま振り上げる。赤い竜が宙を舞った。 「……何だ、アイツ……?」 サビンガを運び、今は整備員達と共に退避シェルターに入っているリオーネ・フィンチは、ワイツタイガーと赤い竜の戦闘に違和感を覚えた。 ワイツタイガーと、竜の間の戦力差は歴然だ。圧倒的と言ってもいい。にもかかわらず、竜は撤退する事も捨て身の攻勢に出ることも無く、ただワイツタイガーを引き付けるように戦っている。確かにワイツタイガーを奪う事が目的ならば、下手な攻勢に出て破壊してしまうのはまずいだろう。しかし、それならば他にも方法はあるはず。 (……裏がある? あるとすれば何だ?) Zi-ARMSが欲しがっているのは、古代種のコアそのものか? それとも、もし既に奴らも古代種を手に入れているとしたら、必要なものは? 「……まさか」 結論に思い至った時、思わず口をついて言葉が漏れた。リオーネは踵を返し、退避シェルターから再び管制室へ戻る。 管制室では、未だ続くワイツタイガーと赤い竜との戦闘の分析が行われていた。目に入ってくる数値はかなり非常識な値を叩き出していたが、とりあえずそれは脇に置いておく。リエルなら耐えられるだろう、根拠は無いが。 目当ての人物を探すが、室内には居ない。手近なオペレーターに問いかける。 「お嬢さ……いえ、主任でしたら奥のシェルターに避難されました」 恐らくあのSP二人も一緒なのだろう。だが、嫌な予感が消えない。それどころか大きくなっている。 「シェルターの場所は?」 場所と道のりを聞き出し、リオーネは走り出す。 「――! あれは……」 シェルター近くに、黒服の男が倒れている。間違いない、エクステリアのSPだ。 「おい、しっかりしろ! 何があった!?」 二人のうち、髪をオールバックにした方を揺り起こす。呻き声をあげ、SPは目を覚ました。 「う……、お嬢様は……?」 「わからん。だが、あんたらがこのザマって事は大丈夫じゃない気がする」 「……くそ、何者だったんだ、あの娘は……」 話を聞くに、侵入者に気付き迎撃に向かったは良いものの、その侵入者が年端も行かない少女だったため隙を突かれて昏倒させられたらしい。 「すまん、お嬢様の安否を……確かめてくれ」 リオーネは奥のシェルターを確認する。だが予想の、それも最悪の予想の通り、そこはもぬけの殻だった。 「……はぁ、はぁ……、まだ、続けるつもりなの?」 赤い竜を見据え、リエルが毒づく。恐ろしくピーキーな機体特性に加え、先ほどからコクピット内の温度が次第に上昇していた。現時点で、摂氏39度。人間の平均体温を超えているこの空間に、長時間居座る自信はリエルにも無い。 「……っ、え!?」 だが、まるでその愚痴に答えたかのように竜がワイツタイガーに背を向けた。自身がブチ開けた隔壁の穴を、そのまま逆に疾駆して行く。 「ま、待て……っ!?」 追おうとしたリエル、だがワイツタイガーはそれに応えてくれなかった。 「ちょ、ちょ……! ヤバい、マジでヤバいってこれ!!」 大慌てで機体を停止させ、使える限りの冷却システムを作動させる。ついでコクピットハッチを開け、飛び降りた。 「うわ……」 改めて確認し、リエルは顔を顰めた。そりゃ暑くなるわけだ、と。 機体が胸部から腹部にかけて、原型をとどめないほどに溶解していたからだ。 「リエル!」 そこに、リオーネが走り寄る。 「あ、リオーネ。ねえ、コレどう思う?」 「それはそれで大変だが、いいかよく聞けリエル・フィアット」 溶けたワイツタイガーを指差すリエルに、リオーネが言う。フルネーム呼びをするのは、決まって大事な話の時だ。 「エクステリア・アーネが誘拐された」 「……う、うん……?」 目を覚ましたエクステリアが見上げていたのは、いつもの見慣れた天井では無かった。鉄骨が剥き出しで、粗末な蛍光灯が幾つか吊るされている。それに、ひどく寒い。 「こ、ここは……?」 起き上がろうとするが、腕が上手く動かない。脚も、何故か自由に動かす事が出来なかった。これではまるで、手足を縛られているようだ。自由に動く首と視線を巡らせて、何とか状況を確認する。 ……手足を縛られ、転がされていた。それも、薄暗い物置のような部屋で。 状況が理解出来ない。エクステリアは芋虫のように悶えるが、手足を縛める結束帯は鎖のように強固だった。 「ど、どうなっているの? たしか、私は……」 ワイツウルフの……正確にはワイツタイガーの起動実験に、二人の猟兵による立会いを依頼した。その後どうなった? そう、確か実験場が襲撃され、シェルターにSPと共に避難して……。 「――……っ!!」 そこで、黒髪の少女に気絶させられた。 確か少女は、『依頼に基づき、貴女を拘束する』と言っていた。つまり自分は、何者かの依頼によりここに連れ込まれたという事になる。 その『何者か』は、考えるまでも無い。Zi-ARMSだ。 「状況は理解出来たかい、お嬢さん?」 ギリギリと建て付けの悪い音を響かせ、扉が開き三人の男が入って来た。ラフな格好をした、少なくともまともな社会人ではない風体の連中だ。 「な、何が目的です!? 身代金でしたら、私もお父様も脅しには屈しません!」 「おうおう気丈なことで。だがあんたもわかってるはずだ。俺達が依頼されてるのは、あんたからある事を聞き出すだけだ」 ブラフ……と言うより、無意識にそうであって欲しいと思った内容はすぐに打ち破られた。となれば、こいつらの目的は一つしかない。 「古代種コアの、制御システムについてだ。代謝抑制のパターンがどうしてもわからんらしくてな」 「おとなしく教えてくれれば痛い目には遭わせない。だが、俺達はこの通り紳士じゃないんでな、反抗したらどうなるか、わかるよなぁ?」 無力な鼠をいたぶる猫のように、男たちは楽しげに言う。代謝抑制パターンは八桁の数字だ。いっそこの際教えてしまうか、あるいは出鱈目な数字で誤魔化しこの場を凌ぐか、エクステリアは必死に考える。 「……おい、聞いてるのか!?」 顎に鋭い痛みを感じた。首にも痛みが走る。蹴られたと気付いたのは、男の振り上げられた脚を見てからだった。 「っ……!」 「女に暴力振るうのは好きじゃねえんだ……、早く吐いちまいな」 涙目で見上げるエクステリアに、男は冷たく吐き捨てた。痛みと恐怖心が邪魔をして、エクステリアは何も言う事が出来ない。 「……だんまりか? おい、アレ持って来い」 それを黙秘と解釈したのか、リーダー格の男が指示を出す。程なくして戻ってきた男が手にするバケツの中身が、エクステリアに容赦なくぶちまけられた。 「きゃああっ!!」 ただでさえ寒さと冷たい床に辟易していた所に、さらに冷水。エクステリアの身体が体温を求めて震えだす。 「さあ、早く喋った方が身のためだぜ?」 冷たい水を被ったからか、少しだけ頭が冷えた。考えてみるに、仮に正しい数字を喋ったとしてもその後の命の保証は無い。殺されないにしても、解放されることはまず無いだろう。エクステリアを人質とすれば、Zi-ARMSはZOITECに対してより強気に出られる。 震えながら、エクステリアは恐怖し身を縮ませた。 「アーネさんの居場所がわかったって?」 ZOITEC本社。本来、門外不出の機密であるワイツウルフおよびサビンガを緊急時とはいえ操縦したという理由で拘束されていたリエルとリオーネは、エクステリアのSPからその話を聞いた。 「はい。お嬢様の身に着けている発信機の電波を追った結果、ここに連れ去られたとわかりました」 オールバックのSP……ボブが、手にした端末に映像を出し二人に見せる。 「当社の哨戒機が捉えた映像です」 「ホエールキング、ね……」 全長225メートルの、空飛ぶ移動要塞。 「役員会ではお嬢様の救出のため、レイズタイガーの起動を決定しました」 もう一人、黒い髪を七三分けにした男性……ダグラスが言う。 「つきましては、そのパイロットを貴方がたにお願いしたい」 「……理由は?」 「正直に話します。まず一点、貴方がたが当社の人間ではない事。万が一責任を追及された場合に、蜥蜴の尻尾に出来るという理由です」 「ふん、妥当だね。次は?」 「……貴女が、凄腕の猟兵だからです」 ダグラスは二人ではなく、リエル個人に向けて言い放った。 「まさか。あたしは只の貧乏猟兵だよ?」 「只の猟兵に、ワイツタイガーを操縦出来るとは思えません」 そう言って、ダグラスはサングラスを外す。その視線は、真っ直ぐにリエルに向けられている。 「そしてフィンチ氏、貴方もです」 「俺が?」 「作戦の上で、二人のチームワークが必要になります。それもゾイド戦と対人戦という、まったく別の行動をしながら確実な連携を取らなければならない。我々はお嬢様からお話を受けた際、可能な限り貴方がたについて調べさせて頂きました。その上で言います。それが可能なのは、貴方達二人しか居ないのです……」 リオーネは少し考え込む。が、それを遮ってリエルが発言した。 「わかった、あたし達でやる」 「よ、よろしいのですか?」 あまりにあっさり依頼を受けたためか、ボブがどもりながら確認する。 「ここまで首突っ込んじゃったら、引っ込みつかないよ。ね、リオーネ?」 「……まあ、そうなるな」 依頼の妥当性、成功率、かかる手間。諸々の内容を考えようとしたが、リオーネはスッパリ諦めた。リエルが『やる』と言ったら、もうやめさせられない。そしてその依頼は、必ず成功させられる。今までもそうして来た。 リエルの直感は、いつもリオーネの上を行く。 「よし、早速準備に入ろう」 そうして大急ぎで準備を進め、リエルとリオーネは現在空を飛んでいた。虎が空を飛ぶとは、なかなか滑稽な光景だとリエルは思う。 「目標まで距離8000……、そろそろお迎えが来るかな」 『なあリエル。聞いていいか?』 「何を?」 『お前、空中戦の経験あるのか?』 「……人生いつもぶっつけ本番!」 『おい』 実際問題、シャレにならない話だとリエルも思う。だが、何故かやれる気がする。根拠は無いが、何となくこの感覚を身体が覚えている気がするのだ。脳内麻薬がそう思わせているだけかも知れないが。 レイズタイガーは、ZOITECが保有する二機目の古代種コアを搭載したゾイドだった。ワイツタイガーが制御システムをサビンガに搭載し安全装置としていたのに対し、この機体は始めから一機の虎型ゾイドとして完成している。 それが空を飛んでいるのは、サポート用に開発されたブロックス、プテロレイズを飛行ユニットとして装備しているからだ。現在、リオーネはこちらに搭乗している。 レイズタイガーとプテロレイズの合体形態は、ジェットレイズタイガーと呼称されていた。 「さあ、来るよリオーネ」 『わかった、落ちるなよ!』 「落とされなければねっ!」 レーダーが、ホエールキングから飛来する機影を捉えた。映像が出る。間違いない、あの赤い竜……デカルトドラゴンと言うらしい竜が、翼を広げ迫る。 「先手必勝!」 ジェットレイズタイガーが、両肩からレーザーを放つ。デカルトドラゴンが鋭く旋回する、だがレーザーの光条はそれを追うように、不規則な軌道を描き空を奔る。 しかし、決め手にはならない。多くはかわされ、一発二発は当たるがデカルトドラゴンの多面体装甲に弾かれ、ソレを破るには至らない。 レーザーの雨が止み、攻守が逆転する。今度はデカルトドラゴンが、脚部から雷撃を釣瓶打ちに放つ。 「おっと!」 やや危なげにそれをかわす、しかしジェットレイズはその行動により、デカルトドラゴンの真正面におびき出されていた。 それを待っていた、そう言わんばかりに、デカルトドラゴンの胸部砲塔が眩しい光を放つ。 ジェットレイズは、それに臆することなく突っ込む。それはまるで、自殺覚悟の特攻のように見えた。 デカルトドラゴンの放った激しい光が、ジェットレイズを飲み込む。 ――勝った。デカルトドラゴンのパイロットは勝利を確信する。 だが、その光を切り裂きレイズタイガーが飛び出した。装甲表面が、まるでデカルトドラゴンの光を吸収したかのように眩しく輝く。 集光パネル。古くは凱龍輝に装備された、光学兵器による攻撃を吸収し自機のエネルギーとする機構だ。 レイズタイガーの制御システムには、この技術を応用したものが使用されている。副次的に、レイズタイガーにも集光パネルが装備される事となったのだ。 「突っ込むよ!!」 予想外の光景に動きの止まったデカルトドラゴンに、レイズタイガーが組み付く。首筋に喰らいつき、牙が装甲を突き破った。 「……弾けろォ!!」 自身のエネルギー、そして先ほど得たデカルトドラゴンのエネルギーが、牙を通してデカルトドラゴンの内部に叩き込まれる。蛇が毒を送り込むがごとく、膨大な熱量がデカルトドラゴンを内側から焼き尽くした。
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/4152.html
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/1493.html
数分、もしかしたら数秒もたっていないかもしれない。 急に下に落ちる感覚から解放されたかと思うと、足の裏に地面の感触が戻ってきた。 どうやら目的の場所に着いたらしい。 恐る恐る目を開けると、そこはトラックでも運ぶんじゃないかってくらい広いフロアだった。 床の付近は明るいけど、上の方は天井が見えないくらい高くて暗闇しか見えない。 壁には西洋の城にありそうな扉が一定間隔で箪笥みたいにたくさん置かれている。 不思議だったのは、格子で覆われた出入り口らしき場所から漏れる光が一定の間隔で下にずれていってることだ。 しばらく眺めていて、光が動いてるわけじゃなく自分が立っているこの場所自体が上昇しているのだということに気がついた。 だとしたら、奇妙な形をしたこの巨大なエレベーターは、今この瞬間もどこかに向かって絶えず上昇を続けていることになる。 シン「・・・ここは」 紫「ようこそ、Belbet room(ベルベットルーム)へ。歓迎いたしますわ」 シン「普通に出てこられないのか、あんたは」 もう紫さんが急に目の前に現れても驚かなくなってきた。 実家を出てから一日かそこらしかっていないのに、ひどい変わりようだ。 どうも慣れというのは時間ではなく、場数で定まるものらしい。 ?「私の台詞を取らないでもらいたいものですな、紫様」 シン「・・・! (うわっ な、何だあれ!)」 八雲紫の背後から何者かが姿を現す。 誰だろうと何気なく目を向けて、あまりに人離れした異形の姿に思わず声を上げそうになった。 あり得ない長さの鷲鼻に、血が知った眼、後退した白髪頭が 後ろに伸びているせいで尖った耳や太い眉毛がより際立って見える。 それに、タキシードに隠れてよく見えないが、腕も足も竹馬を使っているかのように細くて長い。 まるで、西洋の話しに出てくる意地悪な妖精だ。 顔を見て驚くのはさすがに失礼なので必死に声を押し殺したが、この人も八雲紫の関係者なんだろうか。 イゴール「名乗るのが遅れてしまい申し訳ない。私の名はイゴール。 マインドマンサーの力でペルソナ使いを導く役を仰せつかっております。以後お見知りおきを」 シン「あ、こ、こちらこそ(人間・・・じゃないよな? 妖怪なのか)」 容姿に驚きつつも、恐る恐る挨拶を返した。 丁寧な口調といい、老紳士を思わせる立ち振る舞いといい悪い人じゃないみたいだ。 少なくとも、ぎこちなく微笑む俺をにやにやしながら眺めている紫さんよりは遥かにいい人に思えた。 ていうか絶対このこと知ってただろ、紫さん。 題名未定 第三話「 Like a dream come true 」 後篇 イゴール「ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所・・・。 そして、何かの形で“契約”を果たされた方のみが訪れる部屋・・・。 御客人が訪れるなど何年ぶりでしょうな」 紫「彼はあなたにペルソナを授けたフィレモンの従者よ。安心して手を貸してもらいなさい。イゴール。頼むわね」 イゴール「承知いたしました。さ、アスカ様。どうぞこちらへ」 何もなかったはずの所に、いつの間にか高級そうな蒼い家具が置かれていた。 蒼いソファーに座ったイゴールにうながされるまま、シンも蒼い椅子に座ると ちょうど蒼いテーブルクロスが敷かれた丸机を挟んでイゴールと向かい合う形になった。 よく見れば、床も壁も蒼一色だ。こういう趣味なんだろうか。 イゴール「まずは気を落ち着けてください。なに、すぐに済みますとも」 シン「これから何をするんですか」 紫 「見えないペルソナの正体を見破るのよ」 この時初めて聞いたのだが、どうやらシンが貰ったペルソナはかなり厄介な物で、八雲紫でも全く正体が掴めないらしい。 暴走したり、よくわからなかったり、何でまともなペルソナを寄越さないんだと文句の一つも言いたいところだが、 そのまともじゃないペルソナに命を救われているだけに、シンとしては複雑な心境だった。 イゴール「ふむ、まさか・・・いや、しかしこれは・・・。ううむ、実に興味深い」 調べると言っても、特別な機器がいるわけではない。 見かけは、イゴールがシンの胸元に手をかざすだけというごく単純な作業だ。 しかし、すぐに済むと言っていたにもかかわらず、イゴールが集中し始めてからもうかなりの時間がたっている。 痺れを切らしたのか、とうとう紫さんが口をはさんだ。 紫「・・・どうなのイゴール」 イゴール「さっぱりですな。ペルソナは名称どころか姿すら見えません。 こんなことは客人として招いたペルソナ使いの中でも初めてのケースです。 属性的には塔が近いとは思われますが、漠然とし過ぎていてなんとも・・・」 紫「そう、あなたでも無理なら諦めるしかないわね。この際だから、シン自身のアルカナも調べてちょうだい」 シン「アルカナ?」 イゴール「その人物の本質を捉える“鏡”とでも申しましょうか。タロットカードになぞらえて、 その者の属する性質を分類できるのですよ。・・・なるほど、見えてきましたぞ。ほほう、これは面白い」 シンからしてみれば、何が面白いのかさっぱり分からない。 というか、人形のように表情の変わらないイゴールと間近で顔を突き合わせ続けたせいで、 だんだん気分が暗くなってきた。 紫さんも紫さんでずっと難しい顔をしているし、居心地が悪いことこの上ない。 イゴール「私の見立てでは、間違いなくTHE FOOL(ザ・フール)、いわゆる愚者だと思われます。 無邪気さと純粋さを表すアルカナでKEYWORDは『旅立ち』。 正位置は“希望・信頼・流浪(るろう)・独創・可能性・解放” 逆位置(リバース)で、“無計画・愚考・不安定・自分勝手・無鉄砲・別れ”となっております」 紫「へぇ、なかなか面白いわね」 シン「愚者って、愚か者って意味だろ? あんまりいい気はしないけど」 イゴール「可能性に満ちている証拠ですよ。おや?」 イゴールの手が止まり、考え込むような様子を見せる。 イゴール「これは珍しい、すでに幾つかのコミュニティを築かれているようですな」 シン「コミュニティ?」 イゴール「人と人を繋ぎ引き寄せ会う力、絆とでも申しましょうか。ペルソナとはすなわち心の力。 “心”とは“絆”によって満ちるもの。他者とかかわり、絆を育めば貴方自身、 そしてペルソナの成長に繋がる事でしょう。よくよく覚えておかれますよう。 それにしても・・・」 シン「どうかしたんですか」 イゴール「コミュニティとは真実の魂の繋がり。築こうと思ってもそう簡単に築けるものではありません。 大抵はうわべだけで終わるものですが、ここまでそろえられるとは…。 どうやら人脈には恵まれているようですな。いや、たいへん素晴らしい」 そういえば深く考えたことはなかったけど、レイやカミ-ユ、ティアナやはやて先輩、 世間で言われているような親友と呼べる相手は結構いる。 これって珍しいことだったのか。 シン(そうかもしれないな、少なくとも夢で見た“俺”はたった一人だったから) 家族が死んで、故郷に裏切られて、尊敬していた人が殺されて、守りたかった人を守れなくて、 上司が敵になって、親友を失って・・・。 それでも孤独のまま、最後まで地獄のような戦場に立ち続けた。 それに比べたら、今の俺の境遇なんて幸せな方だ。 イゴール「しかし、ペルソナの姿すら捉えられないとなると、ペルソナチェンジは難しいかもしれませんな」 シン「わからないなら、フィレモンに聞けばいいじゃないか。あの人が俺にペルソナをくれた張本人なんだし」 イゴール「あいにくあの方は寝込んでおられます。復活して直後に貴方の覚醒をうながしたものですから」 シン「復活?」 紫「戦いは今に始まったことじゃないということよ。そうだ、シン。ペルソナを出して見てくれないかしら。 直に見れば何か分かるかもしれない」 シン「出してみてって、どうすればいいんだよ」 紫「どうすればって、もう一人の自分を呼び出そうと念じればいいのでしょう?」 シン「・・・ああ、うん(何だかよくわからないけど、とにかくやってみるか)」 目をつぶり、心の中でペルソナを呼び出すことだけを強く考えてみる。 確かにペルソナを貰った時のように力は湧いてくるのだが、目を開けてみると頭上には何もなく 特に何かが変わった様子もなかった。 公子のペルソナ召喚を見ているだけに、どう見ても失敗しているとしか思えない。 シン「・・・何もおこらないけど」 イゴール「いえ、僅かながら暗い影がまとわり付いているのが見えますな。どうやら、降魔自体は成功しているようです」 紫「次は、魔法を使ってみなさい。ああ、言うまでもないと思うけどあまり強力すぎるのは駄目よ」 シン「まほう? ・・・魔法か。え~と・・・」 紫「さっきからどうしたのよ。ペルソナが降魔されてるのなら、自然と魔法や能力が頭の中に入ってきてるはずでしょう」 そう言われても、シンの頭の中に浮かんだのはこの場所はどこに向かってるんだろうという疑問とイゴールの顔が怖いと思ったことくらいだ。 そもそも、さっきのペルソナの召喚ですらどうやったのがよくわからないのに、魔法の使い方などわかるわけがない。 イゴール「・・・紫様、考えたくないことですが」 紫「・・・言ってみなさい」 イゴール「・・・まさか、ペルソナと繋がっている感覚がないのでは・・・」 紫「・・・そんなわけないじゃないの、イゴール。ペルソナは己の中のシャドウを制したからこそ手に入った自分なのよ。 もしそうなら前提が引っくり返るでしょう」 イゴール「しかし、それならばペルソナが姿を現わせない理由も、暴走したことも説明がつくのですが」 何らかのミスでうまくペルソナと接続できなかった場合、暴走、または召喚失敗などがごく稀に起こる。 自分のシャドウが受け入れられない、または自分のペルソナに意識を飲み込まれるなどが原因なのだが、 大抵は時間がたてば正常な状態に戻る。 前者ならシャドウを受け入れられるほどに成長することで、後者なら力を使い果たして。 どちらにせよ、最悪ペルソナそのものを封じればそれですむ問題だ。 だが、シンの場合はそのどれとも違う。 いや、正確にいえばペルソナの正体が不明なせいで違うかどうかすらもよくわからないのだ。 シン「・・・・・・」 紫 「ねぇ本当はできるんでしょう。ほら、怒らないから言ってみなさい」 シン「・・・ごめん、色々やってみたけど無理みたいだ。どうすればいい?」 これには、紫もイゴールも押し黙るしかなかった。 ペルソナをチェンジできないだけなら何とかすることはできる。 自然覚醒型のペルソナ使いは元々自分の中の一番強い自我、つまり一体のペルソナしか扱えないし、 弱いペルソナでも戦闘を繰り返してレベルアップすることで十分戦力になるからだ。 だが、魔法が使えないのではまず戦闘で勝つこと自体が難しい。 なにより、運よく経験を積めたとしても魔法やスキルが使えなければ戦闘ではほとんど役に立たない。 紫「・・・なんてこと。これから先、魔法なしで戦い抜けっていうの」 言うまでもなく、戦いにおいて重要なのは相手の弱点を突くことである。 基本中の基本であるし、確実な勝利を求めるならば当然見過ごすことはできない要素だ。 対シャドウ戦においてもそれは同じで、ペルソナ使い達は相手の弱点にあった魔法をぶつけることで、戦いを優位に進めていく。 隙を作っての追撃、仲間の回復、次の戦いのための撤退。 不必要になったことなど一度もない。大げさでなく、魔法は対シャドウ戦においての切り札なのである。 イゴール「・・・紫様、そう悲観したものでもないかもしれませんぞ」 紫 「慰めはいらないわ、イゴール」 北斗七星が北極星を飲み込むまでの時間をも瞬時に求める事が出来る頭脳でさえ予測できなかったトラブルに 妖怪の賢者は心底頭を抱えたくなった。 力、素早さ、生命力、魔法、魔法耐性、その他様々な恩恵を与えるはずの万能を誇るペルソナが その実、殴るだけしか能のない単純脳筋馬鹿だったのだ。 いっそ、フィレモンが起きるまで放っておこうかとも考えたが、それでは到底間に合わない。 戦いはすでに始まりつつある。 イゴール「いえいえ、もしかしたらあのペルソナ、相当なレベルではないかと思いまして」 紫「・・・そういえばレベルもまだ確かめられてなかったわね」 イゴールの言うとおりかもしれない。 使用者の手を離れて暴走し、メギドラオンまで放ったペルソナだ。 単に降魔しているだけでも、身体能力にかなりの補正がかかるだろう。 イゴール「それに、魔法が使えないということは、ペルソナを呼び出す必要がない分 暴走の危険が無いということでもあります。ものは考えものですな」 紫「今は、それに賭けるしかないか・・・」 紫は有り金全部をはたいてシンに賭けたのだ。出た目が何であろうとこれで勝負するしかない。 シン「それで、俺は結局どうすればいいんだよ」 紫 「それを今悩んでるんじゃないの。とにかく、次に会う時までに何か対策を考えておくから、 今日の所は帰りなさい」 シン「・・・帰るって、どうやって」 紫 「それと、今日話したことは非常に重要だから誰にも話さず、絶対に忘れないこと。 それじゃあ、おやすみなさいシン」 シン「だから、戻るにはどうすれば――――って、あれ?」 誰もいない、真っ暗な病室が目の前に広がっている。 窓から入り込んでいる僅かな月の光で確認する限り、ここはどこかの病院のベットで、 布団をかぶって寝ていた俺は、あれからずっと意識を失っていて・・・。 ・・・なら、あれは夢、だったのか? どこまでが現実で、どこまでが夢だったのか、その“境界”を見極める術はシンにはない。 あの出会いは、現実と言い張るには常識外れで、夢と言いきるにはリアル過ぎた。 だが・・・。 シン「・・・もうすぐ、零時になる」 時計の針が重なって、零時から影時間が開幕する。 人は棺桶になり、灯りは消え、町の光景が一変する。 怪しく輝く月の下でシャドウが徘徊し、ペルソナ使いが戦いを始める。 それだけは、シンにとって間違いなく“現実”で起こっている出来事であり、 暖かかったの日常とのどうしようもないほど決定的な“境界”だった。
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/3215.html
https://w.atwiki.jp/kiryugaya/pages/758.html
「OK、君の言う事は分かった」 いつもの格好とは違う、ごく普通のスーツを着た会長……高柳が睨みを利かせつつ言った。 「だからって、なんで僕が労働なんかしなくちゃいけないんだ。ちょっと恥ずかしいが、僕は自分で胸を張って富豪と言えるくらい富豪なんだぞ。セレブなんだぞ?」 「そんな事を言われても困ります。では聞きますが、会長はご飯の炊き方とか分かるんですか?」 うっ、と言葉に詰まった様子の会長を見て、私こと鎌ヶ谷はため息をついた。 あれから、なんとか家賃1万円のボロアパート(なんと風呂付トイレつきのお得物件だ)を借り、佐野製麺所を乗っ取る計画を立て始めた。 だが、まずは契約書類の出来を100%にしなくてはならない。同じ失敗は許されないのだ。 ……しかし困った事に、会長の意向で本社に連絡は許されない。 経費で何かを買う事など、当然ながら出来ない。 契約書はパソコンで作る。 要するに、この霧生ヶ谷で金を稼ぎ、パソコンを買う事から始めなければならないのだ。 「私は掃除洗濯炊事をすべて引き受けます。時間が余れば内職もします。ですから、会長の今までのノウハウを生かしてお金を稼いでください」 「だ、だが、僕は大学を卒業してすぐに会長に就任したし、お金に困った事もないから『ばいと』とかしたことも無いんだ。大体、どうやって仕事なんか探せばいいんだ」 私は、自分の少ないポケットマネーで買った生活用品の山の中から、求人情報誌『バイト情報MORO!見え』を引きずり出した。表紙には、霧生ヶ谷出身のアイドルKY☆KOがモロモロのぬいぐるみを抱いているグラビアが掲載されている。 「ここに、会長でも出来そうなバイトに印をつけてあります。どれもこのアパートから近いですし、重労働でもないはずです。がんばってください」 そういってポケットに求人情報誌をねじりこみ、ぎゃあぎゃあ騒ぐ高柳を扉から押し出して部屋に鍵をかけた。 崖からわが子を突き落とすライオンは、ちょうどこんな気分なんだろう、としみじみ感じた。 ドアに鍵がかかる音がして、僕は完全に途方にくれる事になった。 『ばいと』。全く未知の領域だ。 数々の事業を手がけ、敵対的TOBを駆使してグループを大きくしてきた僕でも、『ばいと』がどんなものかは知らない。分からない。 「……悩んでいても仕方ない……か」 SIMPSON探偵事務所 鎌ヶ谷が印をつけてくれた一つ目のバイト先である。 『業務内容・簡単な電話応対や書類整理 騒がしくて楽しい職場です!あきさせません!』 なんだか、文章を見るだけでウキウキしてくる。 簡単な仕事で、それも飽きさせないといってくれている。素晴らしいではないか。 とりあえず、ノックをしてみた。 ドアが……倒れた。引き戸でも押し戸でもない。倒れた。前に。 近頃は画期的なドアがあるものだ。 「おおおっ!おいおい、なんてことしてくれるんだ!!」 奥から出てきた嫌に流暢な日本語を操る外国人が、僕に向かって怒鳴り始めた。 「何を言っているんだ。こういうドアじゃないのか?」 「じゃあ聞くがな!お前さんはこういう形で開くドアを見たことがあるのか?」 「無いから驚いているに決まってるだろう」 頭でも痛いのだろうか。外国人は頭を抱えて数秒うなっていたが、跳ねたように顔を上げた。 「そうそう、お前さんは?客か?」 「僕の名前は高柳元弘。このくたびれたビルのボロイ事務所にバイトをしにやってきた」 どうやら頭痛が酷いらしく、またも頭を抱えてうなる外国人。 高柳製薬の『バフェリン』を飲めば一発で治るぞ、と言ってやりたかったが、それは僕の正体に結びつきそうなのでやめておく。 「あー……分かった分かった。んじゃ、そこにあるソファにでも座ってくれ」 なぜか指が入りそうな大きさの穴が無数に開いているソファに腰掛けた。 こういうデザインなんだろうか。中々いいセンスをしている。 「自己紹介がまだだったな。俺の名前はランディ・シンプソン。見てのとおり、私立探偵をやっている」 私立探偵。子供のころにメガネをかけた小学一年生が探偵の真似事をするアニメがあったな、というくらいのイメージしかない。 「とりあえず、現場に出るのと事務所で電話番って選択肢があるんだが……どっちがいい?」 「電話番に決まっているだろう愚民が」 「……まぁお前さんの口の悪さを差し引いても、俺の事務所は人員不足なんだ。助かる」 当然だ。この高柳元弘がこんなぼろい事務所に来ているだけでも感謝して欲しいくらいだ。 一方、ランディは立て付けの悪そうな窓を開けようと四苦八苦していたが、僕はそれに興味がわかなかった。 非常にもったいない事だが、私こと鎌ヶ谷は会社に電話をかけようとしていた。 高柳の手前ああ言って見せたが、このままでは本社に帰るのがいつになるのか分からない。 三回コールがならない内に、相手が出た。 「もしもし、こちら高柳バイオテクノロジーですが」 「専属秘書の鎌ヶ谷だ。至急取締役の瑞原を出してくれ」 特別あわてる事も無く、テレフォンオペレーターは回線をつなぐ。 「もしもし、瑞原ですが」 「私だ、鎌ヶ谷だ。まずい事になった」 私はこれまでの経緯をこの瑞原に話した。 瑞原は本来の高柳グループの母体である「高柳バイオテクノロジー」の取締役であり、私の腹心でもある。 そういえば、彼の娘は霧生ヶ谷にすんでいるとか何とか……。 「なるほど。会長も困ったものですね」 「全くだ。会長の社会勉強とするにしても、色々限界がある」 「分かりました。とりあえず鎌ヶ谷さんの通帳を送っておきます」 「いい判断だ。三日後の定例会議では、とりあえず旅行をしていることにしてくれ」 「了解です」 ぷちん。 電話が切れた。 「しまった、ついでにパソコンも持ってきてもらえばよかった……」 私は財布の小銭入れを見たが、100円玉一枚しか入っていない。 目の前には緑色の公衆電話。 「……まぁ、いいか……」 10円に両替するのは気が引けた。 「早速なんだがよ、コーヒーを淹れてくれないか?」 窓をようやく開けたシンプソンは、額から汗をぬぐいながら言った。 「分かった。キッチンは?」 「そっちの扉のスミにある。俺はバーガー買ってくるから」 予想通りボロいキッチンをごそごそ探り、インスタントコーヒーを出す。 「これだから庶民は……豆を挽くことを知らないのか……?」 すすで真っ黒なヤカンに水を入れている途中、とりあえずIHヒーターを探した。 僕の家はIHクッキングヒーター(もちろん自社製品だ)が備え付けられてある。 いくらボロイとはいえ、IHくらい導入していると踏んでいたのだが…… 「無いな……」 これまた黒ずんだコンロが代わりに備え付けられているが、あいにくコンロは使ったことが無い。 ……だが、仕事を頼まれた以上きちんと遂行しなければならない。 TOPに立つものは常に期待に答えなければならないのだ。 「むぅ……これを回せばいいのか……?」 回してみる。かちり、と音がした。……火が出る気配は無い。 中華料理店などでは、火がきちんと出ていたはずだが。 ボロい事務所のくせに火が出ない最新技術でも使っているというのか。 とりあえずやかんはそのままにしておいた。いつか沸くだろう。 がちゃり。 どうやらシンプソンも戻ってきたようだ。 報告をしてやろうかと思ったが、どうやらそういう雰囲気でもないらしい。 銃声。 向こうの国の会社が、射撃場に連れて行ってくれたことがあるが、その比ではない。 銃声の間隔からみて、マシンガンか何かだろうか。 恐る恐る小窓から中の様子を伺うと、何やらシンプソンが追い詰められている。 追い詰めているのは、20代前半くらいの女性。手には硝煙が微かに上がっているサブマシンガン。 傍らには、その女性の行動にドン引きしている少女がいる。 怖いので関わりたくない。今まで色々な国にわたってきたが、まさかここ日本でテロ(強盗か?)に巻き込まれるとは思わなかった。 「……もちろん、私がアウトローライセンスを持っているからに決まっているじゃないっ!!」 マシンガン女が叫ぶ。 それがあれば銃を乱射しても罪に問われないというのか!? では、あのにっくき佐野製麺所を武力制圧することも可能ではないか。 ……いくらあれば買えるのだろう。僕のポケットマネーで買えるだろうか。 ひたすら思案を続けていたが、ふと窓をのぞくと、いつの間にかマシンガン女と小柄な少女は居なくなっていた。 ……とりあえずあの女を追い、アウトローライセンスとやらを手にしなければ!! 「シンプソン、僕は急用を思い出した。有給をとるぞ」 「……あー、もういいよ……俺もなんか疲れた。もう今日締める」 心が折れたのだろうか。 まぁ、仕方が無いだろう。謎の女が銃を乱射してきたら誰だって憔悴する。僕だってそうなる。 三秒後には脳内をシンプソンからアウトローライセンスで一杯にして、歩き始めた。 すべては、僕のプライドのために。 ランディ・シンプソンは、次々と起こる非日常現象によるストレスを何とか緩和しようとした。 こういう上手くいかない日には、コーヒーを飲んで一服するに限る。 さっき、コーヒーのための湯を沸かさせたはずだ。 ……おかしい。水のままだ。 あの白髪野郎、サボってやがったな!SHIT!! 仕方が無い。 シンプソンはタバコに火をつけた。 その日、SIMPSON探偵事務所の入ったビルは突然謎の大爆発を起こした。 幸い死亡者は居なかったものの、高柳元弘はその日のうちにクビを言い渡された。 ランディは、当然のごとく入院。 ベッドの上で、数回に渡り『もうなんか嫌になってきた……』と呟いていたそうである。
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/900.html
スペックは不愉快だった。 この間のしけい荘が生まれた日は、アパート全員で回転寿司を食べに行き、盛況のうち に幕を閉じた。 なのになぜ──。 「チクショウッ! 今日ハセッカク俺ノ誕生日ダッテノニ、アイツラ“オメデトウ”ノ一 言モアリャシネェッ!」 スペックは今日でめでたく97歳を迎える。しかし、だれも祝ってくれない。それどこ ろか、スペックの誕生日に気づいている気配すらない。 この日のために一週間前からスペックは入念に伏線を張っていた。 わざと大声でハッピーバースデートゥーユーを歌い、しけい荘全員の郵便受けにケーキ の広告を挟み、ことあるごとに「モウスグ俺モ97歳カ」と口ずさんだ。 結果、これらの努力は実ることなく、彼は一人部屋でくさっていた。 「ヤッテラレネェヤッ!」 ドアを乱暴に蹴破り、スペックは外に飛び出した。 肺を空気で満タンにし、エンジンを全開にする。無呼吸で街を全速力で駆け抜けるスペ ック、実年齢97歳。今、老人は風になった。 二メートルを超えるジャージ姿の怪人が疾走する姿に、人々はあるいは悲鳴を上げ、あ るいは逃げ惑い、あるいは腰を抜かし、あるいはこれは白昼夢だと現実逃避した。 まずスペックはコンビニに入り、肉まんを五個わし掴みにし、逃走した。 肉まん五個をほぼ丸飲みで平らげると、今度は近くに備えてあった自販機に目をつけた。 「喉ガ渇イチマッタナ」 拳が唸る。スペックの無呼吸連打によって、直方体であったはずの自販機がみるみるひ しゃげていく。屍から噴き出すコーヒーや炭酸飲料、緑茶が混合(ミックス)された液体 を文字通り浴びるように飲むスペック。 喉の渇きは癒えた。びしょ濡れになりながら、スペックは再び駆け出す。 「飲ンダラ出シタクナリヤガッタ」 陰茎から、電柱にジェットの勢いで叩きつけられる無呼吸小便。 後にこの立ち小便で受けた損傷で倒壊しかけた電柱を、 「ジーザス……。大至急ッ! ステーション大至急ッ! 東京電力が破壊されるんだァッ!」 東京電力の精鋭たちが守ったのは伝説となった。 ひとしきり暴れ終えたスペックだったが、心の隅にこびりつくわびしさは消えない。 ため息をつき、しけい荘202号室に戻るスペック。 すると── 「おせぇぞスペックッ!」 ──皆が待っていた。 ドイル特製のクラッカーが通報まちがいなしの大爆音を鳴らす。 オリバが、柳が、ドリアンが、ゲバルが、シコルスキーが、とびきりの笑顔と拍手でス ペックを迎えた。 「オマエラ……知ッテタノカヨ」 「あれだけやかましく主張すれば、だれだって気づく」 肩をすくめるオリバ。 しかし、基本的にしけい荘の人間は仲間意識は強く、どんちゃん騒ぎが好きである。誕 生日を祝うことに対して、歓迎こそすれ、面倒なことなどあるものか。 「アリガトウ……アリガトウ……」 スペックの目にも涙。本来彼の辞書にはないはずの「感謝」が素直に口からこぼれ落ち た。 「トコロデ、ドイルガイネェナ」 首を左右に振るスペックに、シコルスキーが答える。 「あいつなら、今日は自分がケーキを作るって材料を買いに行ったぜ。……もちろんコッ クのコスプレで」 「ヘッ、アイツラシイヤ」 どっと笑いが起こる。このベストタイミングで、勢いよくドアが開かれた。 「材料を買ってきたぞッ! ロウソクも97本なッ!」 コックの格好で猛スピードで部屋に飛び込み、派手に転倒して業務用小麦粉の袋をぶち まけるドイル。狭い部屋が小麦粉で充満する。粉まみれになり、咳込み、大騒ぎになる一 同。 「ゲホッ、ゲホッ! スゲェ量ダナッ!」 「……こういう時は一服して落ち着こう」 冷静に煙草に火をつけるドリアン。 おめでたい日に相応しい、大爆発。
https://w.atwiki.jp/mayshared/pages/856.html
ラノで読む 1 走る。 走る。 双葉学園島の郊外、山の中を少年はひたすらに走る。 年のころは十歳程度。野球帽を被り、ジャンバーに半ズボンといった、少年らしいいでたちである。 息を荒げて、時折獣のように四つんばいになりながら、ひたすらに走る。 いや、逃げる。 「はっ、はっ、は……!」 後ろを振り返る。 追っ手の姿は無い。 ようやく撒いた、と安堵し、少年は木に背中を預け、ため息をつく。 そして手に持っていたビニル袋を開き―― 木が爆ぜる。 周囲の枝が次々と火花を散らして折れ、砕ける。 その衝撃で少年は袋を落とす。 その袋の中から零れ落ちるのは、双葉学園の中でも一、二を争うと言われる超高級。 一日に十個限定生産、しかも流通する購買はランダム。 幻のパンと呼ばれる、「黄金の焼そばホットドッグ」である。 他にも、焼きたてカナダ産メープルシロップ入りゴールドマスクメロン果汁混ぜ込み黄金のメロンパン、 遠赤外線石窯焼きたて最高級黄金ピザパン、最高級の具材を集めた究極黄金カレーパン等があるという。 それらを作り、購買に卸しているパン屋の名を、疾駆する黄金のパン屋(ゴールデンダッシュベーカリー)。 そのパン屋の場所は誰も知らず、しかし確かに実在する。 双葉学園の都市伝説のひとつである。 噂によると、それは大量の猫(さらには醒徒会長の白虎も混じっているとか)が引く屋台であり、法定速度ブッ千切りで国道を走り抜け、しつこい客には追尾型ミサイルパンをお見舞いするという。 もしかしてラルヴァなんじゃないかともっぱらな噂だ。 閑話休題。 「そこまでだ子犬ちゃん」 声が響く。 藪をかき分けて現れたのは――純白の装甲に身を包んだ騎士。 もう一度光弾が撃たれ、それは少年が背もたれている木を中腹からヘシ折り薙ぎ倒す。 その銃撃の衝撃波で、帽子が落ちる。 その頭からは、獣の耳が生えていた。 つまりは――人間ではない。 「共食いは感心しないな。それはホットドッグだ、子犬ちゃんが食べるには全く持ってよろしくない」 「己(オレ)は犬じゃない! 狼だ!」 「どうでもいい。それはこの俺に食べられる為だけにこの世に生を受けたと言っても過言ではないものだ。 それをネコババ……いや犬だからイヌババか? とにかくひったくるとは感心しないな子犬ちゃん。 さあ、おしりペンペンの時間だ」 そう言って軽やかに踊るようなフットワークで、上段から指を刺す。 そしてジャンプ。空中で捻りを加えた回転をし、少年の前に降り立つ。 だがそれを見計らったように、地に立つ直前に―― 「!」 小さな雷の玉が飛来し、火花を散らす。 それを空中で受け、体勢を崩す。だがそれでも華麗に受身を取り、すぐに立ち上がる。 「やれやれ、教育的指導の邪魔をするとは無粋だな。 コソ泥仲間か? それとも俺と同じで子犬ちゃんにオイタをされたクチか?」 その言葉に応じて表れたのは―― 「どちらでもない」 黄金だった。 黄金の鎧に身を包んだそれは、純白に向き合う。 「そいつの友達の友達だよ」 「なるほど。じゃあお前が代わりにおしりペンペンされるか?」 「それで許してもらえるならそれでもいいが……」 『いいワケねぇだろが!』 別の声が割り込む。だがその声を発したのは紛れもなく、その黄金だった。 いや――黄金の鎧が喋っている。 『王は軽々しく頭をさげるモンじゃねぇ。ましてやお尻ペンペンだ? ふざけんじゃねぇぞこの真っ白ヤロウ!』 「よく判らんが流石はコソ泥のお仲間。反省する頭も無い、か。下品なのはその悪趣味な鎧だけじゃないようだな、金ぴか」 『んだとコノヤロウ! てめぇこそいちいち馬鹿にする態度がうぜぇんだよ!』 「馬鹿にした覚えなどない。俺が超~偉いだけだ」 『むぎー! ふざけてんじゃねぇよこのノータリンのチンドン屋があ!!』 叫ぶ鎧。 ああ、やっぱりコレで登場は不味かったな、と黄金の鎧を纏った彼は思った。 こうなったら戦うしかないだろう。 少なくとも、少年が逃げる時間を稼ぐまでは。 あるいは…… 「己は別に、助けてくれなんて言ってねぇ! 余計なことをするな!」 「そうか。だったら勝手に逃げろ」 「ふ、ふざけるな。狼は敵に背を向けて逃げたり……え?」 その台詞が終わる前に、少年は襟をつかまれ、持ち上げられる。 「狼男なら、まあ大丈夫だろ」 そう言って、盛大に振りかぶる。 「う、うわ、ちょっとタンマ!」 「待たない」 そして。 少年は思いっきりぶん投げられ、みるみるうちに小さくなって消えた。 それを見て、純白の騎士が感嘆の声をあげる。 「おおう、ナイス強肩だな。お前、プロ野球選手になれるんじゃないか」 「無理だよ。コントロールなってないし、それにコレが無ければあんなこと出来ない」 そう言って親指で自分を、いや鎧を指す。 コレを着て試合に出るなんて、ルール上無理だろう。 いや、そういう問題ではないのかもしれないが。 「なるほど、その鎧で身体能力を強化しているタイプか。俺と似た様なタイプだな。色々と違うようだが」 その純白の装甲は、機械部品が見え隠れしている。 異能の超科学により作られたパワードスーツのようなものだろう。 対して黄金の鎧は、意匠といい雰囲気といい、古めかしくも豪奢な……神秘的な雰囲気を持っている。 そういった意味でも両者は似て非なるものだった。 「だがしかし俺はどうすればいい? 昼食を邪魔されたこの憤りは何処にぶつければいい?」 肩を竦める純白に対し、黄金は足を踏み鳴らして怒鳴る。 『安心しやがれ。ンな事気にする必要がなくなるほど、オレが気持ちよぉくお昼寝させてやる!』 「ほう、子守唄でも歌ってくれるのか? なら伴奏は俺がしてやろう。御代は気にするな、出血大サービスだ、文字通りでな!」 売り言葉に買い言葉。 というか一方的に悪者だよなあ、と黄金鎧の中の人は兜の中でため息をついた。 形を見れば明らかだ。 昼飯泥棒をかばい、逃がし、そして被害者に対して(これは自分ではないが)悪口雑言で喧嘩を売っている。 まあ今更、悪い噂が二個や三個ほど増えたところで別に困ることはない。 むしろ問題はこれが長引くと午後の授業に間に合いそうに無いことだ。 昼飯抜きは確実だな、と思った。 「俺はアールイクス。通りすがりの正義の味方って奴だ。お前は?」 「デュラン。ゴルトデュラン……ただの、悪い魔法使いだよ」 そして、純白と黄金が激しくぶつかりあった。 金色蜘蛛と逢魔の空 第三話 魔狼の誇り 森の中で二人の戦士が走る。 Second movement "RAY-FORCE" 『ABRACADABRA!』 アールイクスの放つ光弾と、ゴルトデュランの放つ雷弾が空中でぶつかり合い、爆ぜる。或いは相手の鎧を穿ち、火花を散らす。 「くぅ、しびれるねぇこのビリビリ野郎!」 木を背にして笑うアールイクス。 一方、ゴルトデュランもまた石を背にしていた。 先ほどの息をつかせぬ銃撃の攻防から一転して、静かな緊張が場を支配する。 さしずめ、西部劇における決闘のような――そんな静寂。 それが、どれだけ続いただろうか。 そして動いたのは、どちらが先だったろうか。 跳躍。 お互い身を翻らせ、飛び出す。 空中で、閃光を伴った拳と、雷撃を伴った拳がぶつかる。 強大な二つの力がぶつかり、スパーク。 「ぬおっ!?」 「くうっ!」 爆発。 拮抗する力と力が互いに絡みつく蛇のように、その力を反発させ増幅させる。 木々がざわざわとざわめき、土煙が舞い、鳥達が慄いて飛び去る。 「ぐあああっ!!」 「うわああっ!!」 互いに悲鳴が上がる。 強大な爆発は閃光と雷電を伴い、互いの視界を白く染め上げた。 「っ!」 爆発で激しく弾き飛ばされるゴルトデュラン。 ごろごろと転がり、物質化させていた黄金の鎧が影へと戻り、消える。 「……っ、痛い」 体を起す、逢馬空。 「だがまあ、窮地は脱した、かな」 あのまま戦っていたら危険だった。 とてつもなく、強い相手だ。未だに拳が痺れている。 『あいつが、な』 ゴルトシュピーネは相変わらず大きい口を叩いていた。相手の強さを理解できないような頭ではないが、素直に認められるような性格でもなかった。 有体に言えば負けず嫌いなのだ。 『次は、負けねーぞ』 「あのな。そもそも本来、僕らは彼と戦う理由はないんだけど?」 今回はたまたまだ。 級友である委員長、秋森有紀の友達であるところのあの人狼の少年を助けるためにこうなったしまった、というだけ。 そうでもなければわざわざ戦う理由なんて無い。 『男にはな、理由なんざいらねぇ時もあんだよ!』 「うんそうだね。さて、彼の飛んでった方向は……」 『スルーされたっ!?』 慣れたものであった。 そしてゴルトシュピーネは影の中に消える。 空は、そのまま森の中へと消えた。 一方、時を同じくして、爆発で激しく弾き飛ばされたアールイクス。 おなじく爆風で転がりながらも体勢を立て直す。 「……逃げたか。ということは、俺の勝ちという事だな」 そう言って、武装を解除する。 一瞬の光の後、そこには天地奏の姿があった。 「しかし……」 ガサリとビニル袋を取り出す。 「取り返したはいいが、すっかりこんがりとコゲちまった! ……いや、オコゲはオコゲで美味いのか?」 そして一口食べて……奏は言った。 「前衛的(アヴァンギャルド)な味だな!」 そして、倒れた。 大の字で。 全身を痺れさせて。煙を吹いて。 まだ電撃が残っていた炭は、彼のお口には合わなかったようだった。 2 「大変だったようだねぇ、ボーイ」 双葉学園のとある廃教会にて、逢馬空は労いの声をかけられた。 空がこの廃教会を訪れたのは、空が所属する魔術結社――【聖堂薔薇十字騎士団(ドゥームローゼンクロイツオルデン)】への連絡のためだ。 聖堂薔薇十字騎士団(ドゥームローゼンクロイツオルデン)。それは薔薇十字団(ローゼンクロイツ)、黄金の夜明け団(ゴールデン・ドーン)、そして聖堂騎士団(オルド・テンプリ)の流れを汲む西洋魔術結社である。 その構成は一般的なGD系西洋魔術結社の例に漏れないが、特記すべきことは……双葉学園都市にロッジを持っている、ということだ。 多くの異能者達がいるこの学園都市には、当然ながら魔術系異能者達もまた多く存在する。 その中でも、古典伝統を受け継ぐ西洋魔術の使い手たち――魔術師たちは、自らの存在を隠している。 理由は、ただひとつ――“昔からそうだったから”だ。 些か拍子抜けの理由かもしれないが、事実としてそうなのだ。そしてそれが大切なのだ。 前世紀、魔術が秘匿されていた理由は多く分けて二つ。 魔術師だと知れれば、一般の者達の嘲笑や迫害に晒されていたと言う事。 そして、知識や秘伝を認めた者達のみに伝える為、ということだ。 1999年の事件により世界は一変し、過去よりも異能の力は人に知られることとなった。 何よりも、ラルヴァの大量発生により、魔術師達もまたより必要とされるようになり、魔術師だというだけで迫害や嘲笑を受けることも無くなった。 だがそれでも――魔術とは秘匿されるべきなのだ。 故に、双葉学園生徒としてこの街に住む魔術師の中にも、自らが魔術師――否、異能者であることを秘匿している者も多い。もっとも、それは絶対鉄則の掟ではない。少なくとも双葉学園に魔術師ということがばれた所で、それを咎と見る魔術師達はいないだろう。 そんな魔術師達の相互組合(コミュニティ)。それが、逢馬空の所属する魔術結社だ。 そこに在籍する魔術師として、空には連絡・報告の義務がある。 だが先日は急に秋森有紀から電話が入り、そしてそのまま彼女達を助けに走った。 そのことについて後悔するつもりは全くない。だが…… そのおかげで、予定を反故にしてしまい、姉に酷い目に合わされてしまった。 それを思い出すだけで、魂が軋む。 それを思い出すだけで、心が挫ける。 それを思い出すだけで、身が竦む。 恐怖に、だ。 圧倒的恐怖。絶対的恐怖。理屈も道理も何もかも超越した、真の恐怖だ。 人は、笑えるのだ。 怒りながら笑えるのだ。慈母のような、女神のような、天使のような笑顔を浮かべながら、平然と人の心魂をヘシ折る事が出来るのだ。 その事実がなにより恐ろしい。 そんな空をにやにやと笑いながら見ているのは、修道服(カソック)の上に袈裟を着込んだ、和洋折衷の怪しさ全開の神職者。 まず、仏教なのか基督教なのかが判別付きにくい。場所が教会であるなら後者なのだろうが、いかんせん廃教会なのでそれも怪しい。 胸にはロザリオではなくて、髑髏をあしらったシルバーのペンダント。両手にも手首、指とシルバーをゴテゴテにつけている。 染め上げた肩まである眺めの金髪に無精ひげと、そして眼帯。カソックから除く足は素足に下駄。しかも革ベルトで固定している。 そんなのが、廃教会の机に気だるげに腰掛け、見下ろしてきている。 怪しさが足を生やして歩いているような、そんな風体だった。 「学園を騒がせている、通称昼飯狩人(ランチハンター)……いちいちふたつ名をつけるのは学生ならではかねぇ? 僕にもかっこいいふたつ名考えてくれないかなあと常々思うなあ」 『てめぇにゃエセ神父で十分だ』 空の足元で影が蠢く。 影……ゴルトシュピーネの言葉に、神父は笑いながら返す。 「あれぇ? 僕にはちゃんとジョージ秋葉って名前があるんだけどねぇ。勝手に人の名前変えちゃいけないよ。ああちなみにアキハではなくアキバだ よ。そこ勘違いしないでね、アンダスタン?」 『てめぇがあだ名つけろって言ったんだろうがよ!』 「あれぇ? 僕そんなこと言ったっけ? 捏造はよくないなあ」 『てめぇ……!』 剣呑な雰囲気を、空の声が遮る。 「喧嘩はやめ。だいたい、アレに歯向かって勝てると思ってんのか、ゴルト」 『……ッ』 「あれぇ? ボーイはちゃんと自覚してるんだ、そっちのデビルと違って」 「そりゃあ、ね」 空は言う。 実際に一度経験しているのだ。冗談のような彼我の実力差を。 勝てない――少なくとも、今は、まだ。 「結構結構。そういう子は強くなる。お兄さん好みだよそういうの。君が女の子だったら放っておかないのに」 くっくっく、と笑う。 「今僕は男性として生を受けたことに両親と神様に最高級の感謝をしてるよ」 「そりゃ結構。あれぇ、でも君はとある可能性を失念してるよ? 俺が男女どっちもいけるクチって可能性に」 「もしそうならとうの昔に僕は被害にあってるだろ」 「あれぇ? でもこうは考えられないかな。青い果実が実るまで待ってる、とかさぁ」 笑いながらじっと空を見る秋葉。 『おい兄弟。いつかコイツ殺そう』 「そうだな、いつか絶対」 「あれぇ? 本人を目の前にそういう相談とか、君たちも大胆なんだねぇ」 笑う秋葉に、空はため息をつく。どうもこの男は苦手である。 「まあいいさ。大胆不敵大いに結構。いやいや、報告聞いてびっくりさぁ。 まさかねぇ、あのロードヴァンパイアの胤を使い魔にするとはねぇ、大胆不敵にもほどがあるって。上の人たちもびっくりしてたよ? あの宝石の吸血鬼。わかってるのかいボーイ? 君が何を手に入れたのか」 「手に入れた、とか言うなよ。彼女はモノじゃない」 空の言葉に、ジョージは両手をあげて降参のポーズをとる。 だがその口調は決して悪びれていない軽薄なままだ。 「失礼。失言だった。でもまあ許して欲しいねぇ、ぼかぁ一応神父だよ? 聖職者にとって、吸血鬼は不倶戴天の天敵だ。それを見逃してあげてるんだ、感謝してほしいものさ」 『よく言うぜ、生臭神父が』 「破壊僧だからねぇ。でもホント、よく考えた方がいいぜ? 今や彼女こそが“宝石”の後継者だ。君がその彼女の主ということは、つまりは君が……君こそが、“宝石”の吸血鬼の遺産を受け継ぐってことさ。デビルにとっちゃ喜ばしい財産かもしれないけどねぇ? ボーイにとっちゃ、重くてでかすぎる厄介な荷物だと思うよ?」 『だから寄付しろ……とか言うんじゃねぇだろうな』 「言わないさそんなこと。それが何かも判らないんだぜ? 不確定なリスクを背負い込むほど僕も、騎士団(オルデン)も余裕があるわけじゃないさ。だから僕たちは今のところ様子見だね」 「寛大な処置、感謝するよ」 「皮肉かい? ……って、皮肉言うような子じゃなかったっけ、ボーイは。 ああそうそう、皮肉で思い出したけどさあ。わかってるのかなあボーイズ。 キミ達のやってることは、犯罪者への肩入れにも等しいってさぁ」 「何がだよ?」 「話を戻したんだよ。昼飯のコソドロのワンちゃんの事さ」 「犯罪って……あれは子供の悪戯だろ」 「言葉遊びかい? でもさあ、万引きと窃盗は同じなんだよねえ、アンダスタン? そういうこと、君はまた空気を読まずに勝手に事件に首を突っ込んで、しかも悪者に加担している。それってどうなんだろうねえ?」 「加担しているわけじゃない」 「でも彼を捕まえるつもりはない。そりゃそうだろうねぇ、だって相手はラルヴァだ」 軽薄な笑いを貼り付けて、ジョージは言う。 「悪事を働くラルヴァは倒す。それが――双葉学園だものねぇ?」 そのからかうような挑発的な言葉に、しかし空は表情を変えない。 ただ一言、 「関係ないよ」 そう言って踵を返す。 「あの子は僕の、友達の友達だ。だから守るし、悪いことしてるなら反省だってさせるさ。そして…… 双葉学園が彼を倒すと言うなら、僕はそれに敵対するだけだ」 その言葉に、ジョージは笑った。とても楽しそうに。 「HA――! いいね、グッドだ。君は相変わらず正しく歪んでるねぇ、実にいい。悪魔を宿すに相応しい、素晴らしく歪んだパーソナリテイだ。実にグッドだよ。グッドすぎて目を背けたくなる。 で――疑問なんだけど。何故そこまで君は肩入れするんだい、たった一匹のラルヴァに。歪んでるよ、そういうの。君は――人間と怪物、どっちに肩入れするんだい? 君の立つべき場所は、どちらなのかなあ?」 「決まってるよ」 「ほう?」 「友達に肩入れするんだ、僕は」 3 「己(オレ)は頼んでない、そういうの!」 翌日の昼。 その肩入れはいきなり拒絶された。 「ていうか、投げるな! すごく痛かったぞ!」 「でも生きてるじゃないか、五体満足で」 「己(オレ)が人狼じゃなかったら死んでた!」 「人狼じゃないか」 「う……」 空の平然とした言葉に、人狼の少年は声を詰まらせる。 場所は公園。その少年はダンボールハウスで過ごしているらしい。作り直したダンボールハウスのそば、芝生に敷いたダンボールに座って腹を立てている。 「ほらほら、鋭斗くん。そんなこと言うもんじゃないよ?」 秋森有紀がなだめる。 「……っ」 有紀の言葉に、鋭斗はそっぽを向いて黙る。 「なにこの子、生意気。本当に有紀の友達なの?」 そうジト目で言う浅羽鍔姫。そんな鍔姫に対し、鋭斗は睨み返して言う。 「五月蝿い、チビ」 「あ」 それは危険ワードだった。 たちまち鍔姫の顔が紅潮する。 ぷっちーん。 「だれがマイクロどちびじゃーっ!」 鍔姫が叫んだ。怒鳴る鍔姫をあわてて空が押さえる。 「うん、落ち着いて。彼はチビといっただけでマイクロとは言ってないから」 「チビ言うなーっ! だいたいこのガキだってドチビでしょーがっ!」 「な、なんだと! 己(オレ)は良いんだよ、まだ成長期だ!」 「だから落ち着いて、どっちもどっちだから」 「「うるさいっ!!」」 二人の声がハモった。 「わぁ、息ぴったり」 『いや委員長、お前もお前で空気読め』 影の中から頭半分だけ出したゴルトシュピーネが突っ込んだ。 どうにも項にも、場はカオスであった。 狗守鋭斗(くがみえいと)。 有紀が友達になったという人狼である。 人狼とは、世界でもかなりポピュラーで、類似も多いラルヴァの一族、いわゆる「狼男」である。 日本にもいろんな種族の人狼がいる、いや……いた。 ニホンオオカミが絶滅したのと同じく、狼の一族はほぼ絶滅しているといってもいい。 だから、今この国にいる人狼は、外来種か、あるいは絶滅種の生き残りということだ。 そして、彼は後者であった。 人狼の一族、狗守の里の生き残り。狗神(イヌガミ)。 鋭斗は双葉学園にやってきて、そして――おなかをすかせて行き倒れ、有紀にごはんを貰い、知り合った。 「――ていうかなんでみんなでごはん食べてんの私達!?」 公園でシートを敷き。弁当を並べて食べながら、ふと我に返ったように鍔姫が声を上げた。 ノリツッコミであった。 「あふぁふぁ。ごはんをはべふほひはにひやらであふべきだけどにぎやらなのほぜっひょうするのはひがふ」 もしゃもしゃとおにぎりをほおばりながら空が言う。 「飲み込んでから言うっ!」 「浅羽。ごはんを食べる時はにぎやかであるべきだけどにぎやかなのと絶叫するのは違う」 「律儀に言い直した!」 突っ込みを終えてから、とりあえず座りなおす鍔姫。 「しかし……」 不貞腐れながらも座って弁当を食べている鋭斗を見て、空が言う。 「お前は誰でも餌付けするな」 「そう? 別に特別なことじゃないよ?」 「うん、いつもの応酬が微妙に違っているというか、それはかなり聞き捨てなら無い会話だと思うけど」 鍔姫が突っ込みをいれる。 というか、自分も餌付けされた事になるのだろうか、と鍔姫は内心ぼやく。 まあ、確かに昼飯に誘われたわけだし。 「というかそれなら最後まで面倒みなさいよ。そいつでしょ、最近巷を騒がせている、お昼ごはん泥棒。なんでそれと一緒に囲んでんのよ」 「まあ、私も鋭斗くんのごはん用意してるんだけど。でもいつも会えるってわけじゃないし」 有紀が困り顔で言う。 その鋭斗用に別に作った弁当は、今鋭斗がちゃんと食べている。 骨付きソーセージにミートボールと小さなハンバーグという、肉尽くしの弁当だった。 『ならソレはオレが食うからよこせ』 「己(オレ)のだ!」 『ああ!? だったら盗っ人みてーなことやめろってんだ』 「指図するな」 不貞腐れながら、鋭斗は弁当をかっ喰らう。 『ケッ』 その姿を見ながらゴルトは言った。 『プライドねーのかね、てめーは』 その一言に。 今度は、鋭斗が激昂した。 「なんだと!」 立ち上がる鋭斗。 「もう一度言って見ろ、己(オレ)が、誇りがないだと!?」 『……怒るってこたぁ、図星か? 図星を指されたら怒る。正論ほどムカつくことはないわなぁ』 「黙れ、蜘蛛野郎!」 『おっと』 空になった弁当箱を投げる鋭斗。ゴルトはさっと影に潜んでそれを回避する。 「お前に何がわかる……己(オレ)は。己(オレ)は!」 鋭斗は影を睨みつける。 その叫びに、静まり返る。 鋭斗の目尻には、涙さえ浮かんでいた。 「何かあったのか」 「何も無い!」 空の言葉に、鋭斗は叫ぶ。 「そうか」 空はただそう返答する。 「……ちょっとあんた、さっきから……」 鍔姫が立ち上がる。そして手を伸ばすが、鋭斗はそれをはたく。 「己(オレ)は」 鋭斗は言う。 「恩は忘れない。だけど、己(オレ)は……目的を遂げるまで、馴れ合うことは無い! 己(オレ)は、独りだ。独りでいい……!」 血を吐くような叫びをあげ、そして鋭斗は跳び去った。 「……」 空が弁当を食べる音だけが響く。 『なんでぇアイツ……短気っつーかヒステリーっつーか。 お前といい勝負だなぁツバキチ……あ痛!』 鍔姫に殴られた。 「誰が短気よ」 『そーいうところだっつーのコノヤロウ!』 てめーまだ悪魔抜け切ってねぇんじゃねぇか、とゴルトは言う。 それに対し、鍔姫はふんっ、と鼻を鳴らしながら影を踏みつける。 「仲いいね、二人とも」 「どこがよ有紀っ!」 「でも……大丈夫かな、鋭斗君」 有紀が、鋭斗の飛び去った方角を見て心配そうに言う。 「だいじょーぶじゃないの、元気いっぱいだし」 「うん……それならいいんだけど」 「何よ、ずいぶんと心配そうよね」 「私、聞いたんだけど」 有紀が言う。 「鋭斗君……一族を、その」 「……殺されたのか」 空が有紀の態度から、その事実を察する。 たった一人で双葉学園都市で生きようとする、十歳程度の少年。ラルヴァ。 なるほど、考えてみればその通りだ。 ラルヴァといえど親はいる。 ましてや、人並みの知性、文化を持ち、人と共存、あるいは隣り合わせで暮らすようなラルヴァならなおさらだ。 だが彼は、鋭斗は独りだった。まだ少年、いや子供なのに。 狼、それは「一匹狼」という言葉のイメージが先行してしまい誤解されがちだが、群れで生息する動物だ。 狼の特性を持つ人狼の民とて、例外ではない。 そんな人狼の少年が、ただ独りで双葉学園でホームレスのように生きている。 それを考えると、天涯孤独であろうことは間違いが無い。 「そんな……」 「うん。でも、だからさっき楽しそうにしてたから。だから余計に心配かな……」 「あれでっ!?」 『楽しそうっ!?』 鍔姫とゴルトの声が同調する。 あれで楽しそうだったんかい、と。どう見ても機嫌が悪そうだったが。 「わかるよ。鍔姫だって最初あんなかんじだったし」 「へ?」 「似てると思うよ確かに、鍔姫も鋭斗くんも」 「どこが?」 「うーん、今の鍔姫とはちょっと違うかな? 最初の頃」 「最初……」 「なんかさ、ちょっと張り詰めてたってかんじで」 有紀は言う。 そう、確かに鍔姫は転校して来たときは、とにかく気を張っていた。 だがそれでも、それを気取られぬように必死だったはずなのだが。 (……鋭いなあ) 最初から見透かされていたのかと、鍔姫は嘆息する。 だからこそ気を利かせてくれて、そして自分は救われたのだろう、と。 だったら。 遠慮なく踏み込んでくるこの委員長と、空気を読まずに触れてくるこの男に――あの生意気な少年も救われるのだろうか? それは願っても無いことであり、そして……少し、嫌な気分がする、と鍔姫は思った。 なんだろう、この気持ちは。 それは……嫉妬だろうか。 (いやだな、薄汚いな、私) この二人が、自分以外の誰かを救う……それが少しだけ嫌な自分がいる。 独占欲、か。 鍔姫は、そんな裡に生まれた心を流して消し去ろうとするかのように、水筒からお茶をコップに注ぎ、飲み干した。 4 「空くん、大変!」 授業が終わった時。 珍しく有紀が血相を変えて飛び込んで来た。 「鋭斗君が……」 「なに、風紀委員にでもとっ捕まったの?」 鍔姫が興味なさげにいう。そしてそれに対する返答は、それどころではないものだった。 「討伐隊が組まれるって!」 「……」 討伐隊。 そう、討伐……だ。 物騒すぎる響き。それは、双葉学園が、昼飯泥棒のラルヴァをついに、「倒すべき対象」と認めたということだ。 ……殺し、滅ぼすべき敵だ、と。 「……そんな!」 その物騒な言葉に、鍔姫が立ち上がる。 「なんで討伐隊って、そんな」 「鋭斗くん――人を、殺したらしいの」 「馬鹿な!」 鍔姫が叫ぶ。信じられない、というように 「私だって信じてないよ。でも……そういう話で動いちゃってるの」 「まさか昨日の喧嘩で自棄(やけ)になってとか……」 「どうだろうな。ていうか……」 空が言う。 「殺されたのは、誰だ?」 「え? それは……」 「秋森、質問だ。それは、醒徒会が公式に組む、作戦(ミッション)としての討伐隊? それとも……生徒有志による討伐隊?」 二つには、大きな隔たりがある。 前者はまさに双葉学園の正式な任務だ。だが、しかしいかんせんそのような任務となると、お役所仕事……とまではいかないが、動きに時間がかかることも珍しくない。 対して後者は、事件が起きた時の現場の判断で組まれることが多い。 「確かに人がラルヴァに殺されたのなら、学園が討伐隊を組むのも当然だろう。 だけど……なら、誰がいつどこで殺された? そんな話は僕は聞いてない。浅羽、お前は?」 「わ、私も……」 「そうだ。人が殺されたのなら、噂になるはずだ。だがそれが無い。そして、なのに討伐隊がこうも速やかに組まれる……あべこべだ、順番がおかしい。昨日の今日だ。なのに…… まるで、既成事実を作ってしまえ、とばかりに」 「どういうこと……?」 理解が追いついていない鍔姫に、空は言う。 「一度討伐隊が組まれてしまえば、鋭斗に弁当を奪われて憤懣やるかたない連中が次から次へと討伐隊を編成するかもしれない。組まずとも。立ち上がり狙うだろう。 そしてそれを狙っている者がいる……そうでなければ、こんな動きは理にかなってない」 「……うん、さすが空君、冷静だ」 有紀が席につき、深く呼吸する。 「駄目だな私、あせっちゃった」 「仕方ないよ有紀。友達が狙われてるんでしょ。冷静になれるのは空ぐらいなもんよ」 空気読めないし、と付け加える。それが逆に助かったけどもね、とも。 「……」 空は思い出す。 先日のような、あんな強い相手……アールイクスのような異能者たちが何人も集まって、鋭斗を狙うなら。 討伐しようとするなら――彼は万に一つも助からないだろう。 そして、それを自分が前のように邪魔をしたらどうなるか。明白だ。 勝てない。 逃げられない。 それどころか、自分もまた、正体不明のラルヴァとして――斃される展開が容易に想像できた。 『……』 影の中で、ゴルトシュピーネもまた無言。それが何より雄弁に語っている。 益が無い。 意味が無い。 普通に考えれば。ただ迷惑をかけられただけの一匹のラルヴァのために、命を掛ける道理など全く無い。 そう、そんな道理など、全く無いのだ。 だが―― 空は立ち上がる。 窓の外を見て。 「どこいくの?」 「決まってるよ」 そう、確かに意味が無い。 だからといって、動かぬ理屈にはならない。 一度、一緒にごはんを食べた仲だ。 険悪で剣呑で騒がしい食事だったが、決して――不味い食事ではなかった。 ただそれだけ。 それだけで――命を掛けるには、充分の理由だ。 トップに戻る 作品保管庫に戻る
https://w.atwiki.jp/oreqsw/pages/1200.html
俺「ストライクウィッチーズだっていいじゃないカ」 314-345 作者 ID 7NVgREdC0 総レス数14 あらすじ うわー足三本だ 俺「うえええええええええ!?足が三本!?本当だああああ!?」バサバサバササッッ エーリカ「えっ!?義足じゃないの!?」ガタンッ バルクホルン「ハルトマン・・・本気で思ってたのか?」 エーリカ「うん」 芳佳「えええええええええ!?3本ですか!?」アタフタ 俺「えっと、とりあえず、図書室に行ってきます」バサササササササッ リーネ「あっ、行っちゃった」 芳佳「俺さんの分、どうしよう」 エーリカ「芋は私が!」ガタンッ ルッキーニ「はいはーい!じゃータコは食べるー!」バタンッ シャーリー「肉はいただいたぁ!」ズダァンッ エイラ「野菜はいたたくぞ!」スタッ 坂本「米は貰ったあああああああああああああああああっ!」 俺「ふう、ここが図書室か」 図書室に着くまでに足を隠すことを試してみた。理由は簡単。三本足だと隠れている時にばれるからな。 実際何とかなった。これで安心してのぞk・・・おっと。ワタシワイッタイナニヲイッテイタノデスカ? 俺「さて、どれだ?」 世界のカラス分布、カラスの種類、世界の伝承・・・おっと、これかな 俺「あったあった。なになに?モリガン・・・いや、俺は扶桑人だからむしろこっちだろ。 なになに?ギリシア神話?ちがう、なら・・・、あったあった。ふむ、やっぱり八咫烏か」 俺「しかしなんで何で八咫烏に?まーいいか」 俺「どうも。お騒がせしました」 坂本「どうだ?何だったのか分かったか?」 俺「えっとですね。詳しくはわかりませんが、八咫烏の可能性が一番高いと思いますよ」 坂本「はっはっはっはっは!そうかそうか!それは珍しいな!頑張るがいい!はっはっはっはっは!」 俺「少佐、なんでそんなに機嫌がいいんですか?」 坂本「米をたくさん食べたからだ!はっはっは!」 俺「あああああっ!俺の昼飯がない!」 エーリカ「それはおいといて、それっていったいなんなのー?」 坂本「扶桑の伝説上の生き物だっ!はっはっは!」 バルクホルン「ほおぉ。それは強そうだな。どうだ俺、一戦交えてみないか」 俺「ええええええええええええええ!?」ガタンッ エーリカ「面白そうだねー」クスクスッ ミーナ「トゥルーデ、ほどほどにね」クスクスッ 俺「本当にやるのか・・・」 ミーナ「えーと、8日後ならネウロイも来る気配がなさそうだし、その日にやったら?」 バルクホルン「ほう、一週間の準備期間か。俺!心して待っていろよ」バン! 俺「」コクッガクガクブルブル 芳佳「俺さん、大丈夫ですかー?」 俺「」コクッガクガクブルブル リーネ「紅茶、入れましょうか?」 俺「」コクッガクガクブルブル エイラ「おーい生返事してるダロー」 俺「」コクッガクガクブルブル サーニャ「頷いてる・・・」 俺「」コクッガクガクブルブル エーリカ「とりあえず部屋に戻ったらー?」 俺「」コクッガクガクブルブル ペリーヌ「ほ、本当に大丈夫ですの?」 俺「」コクッガクガクブルブル ルッキーニ「俺ー俺ー聞いてるー?聞いてるなら頷かないでー」 俺「」コクッガクガクブルブル シャーリー「こりゃもう完全に精神的に行っちゃったな・・・」 俺「」コクッガクガクブルブル 坂本「はっはっはっはっは!」 俺「」コクッガクガクブルブル バルクホルン「ええい、いつまでうじうじしている!さっさと部屋に戻れ!」 俺「」コクッガクガクブルブル 芳佳「そうだ!坂本さん・・・」コショコショ 坂本「なるほど!そうだ、エイラ、バルクホルン」コショコショ エイラ「おっ、面白そうだな。サーニャぁ」コショコショ バルクホルン「馬鹿ものっ!カールスラント軍人たるもの・・・いや、いいか。ハルトマン!こっちだ!」コショコショ 坂本「たあっ」ポイッ つ黒い元液体の固まった物体 エイラ「ほいっ」ポイッ つ黒い飴のような物体 バルクホルン「だすっ」ポイッ つ白い懐から取り出した謎の物体 芳佳「とうっ」ポイッ つ茶色いねばねばした物体 サーニャ「えいっ」ポイッ つ茶色い鍋についていた物体 エーリカ「とすっ」ポイッ つ白いまるで料理に失敗したような物体 俺「ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」ガバッ゙ その時に何があったかを詳しく話そう。要は口の中に謎の物体を六個一気に投げいられたわけだ。 そうなったらどうなるか。少し考えてみても欲しい。あなたも寝ていたり落ち込んでいる時にやってみては いかがだろうか。 口の中に広がるあの味は何とも言えなかった。絶対ネウロイも破壊できるよ。 俺「が・・・は゛っ゛」バタッ ペリーヌ「あっ、俺さんっ!?」 ミーナ「大丈夫!?俺さん!俺さん!」 シャーリー「俺ー!聞こえるかー!」 ルッキーニ「脈ない!呼吸ない!瞳孔・・・開いてる・・・」 リーネ「えええええええええええええ!?」 俺「う・・・ん?なんだここは?体が軽いな」 自分の眼の前にはどこまでも続いているような川と同じくどこまでも続いているような花畑。 俺「あの花は・・・蓮かな?」 少し進んでいくと、橋が見えた 俺「橋があった。渡ってみようかな」 しかし橋の上には一つの黒い影。しかしなぜか全く警戒はしなかった。 俺「黒い・・・鳥、カラスか。足が三本もあるな。なんだろう」 カラス?「俺、貴様がいるべきはここではない」バサッバサッ 俺「なんで俺の名前を知ってるんだ?しかし、ここにいるべきではないとはどういう意味だ?」 不思議と言葉がため口になる。まるで昔から知っている友人と話しているようだ。 カラス?「貴様はまだ死ぬべきではないと言っている。何のために貴様を助けたと思っている」バサッバサッ 俺「どういう意味だ?俺を助けたって」 カラス?「ふん、まだ思いだせないか。まあいい、今は別に思い出すべき時ではないからな」バサッバサッ 俺「何の話をしているんだお前は?」 カラス?「思い出せたらわかるさ。しかし今はその時ではないと言っている」バサッバサッ 俺「なんだかよくわからんがとりあえず待てということか?」 カラス?「まぁそうだな、さあ、帰るぞ」バサッバサッ 俺「どこに帰るんだよ?帰り道は知らないぞ」 カラス?「心配するな。私が知っている。足をつかめ」バサッバサッ 俺「りょーかい」バシッ カラス?「では行くぞ」バサッバサッ 俺「うおっ」ガバッ 芳佳「あっ、俺さん!」ホッ エイラ「よかった。死んだかと思ったぞ?」 エーリカ「美少女を心配させるなんてなんて罪な男なんでしょう~」 ミーナ「あなたのせいでもあるでしょ?」 エーリカ「うぐっ」 俺(なんだったんだ?あれ・・・) 周りを見るとそこは食堂だった。 俺(ああそうか。あそこは三途の川か。じゃああのカラスは?ええいめんどい。もう無視しよう) 俺「あっ、質問があるんですけど。一つ、一番大きい塊を投げ込んだのは誰ですか?確か最後に入ったはずですが、あれでとどめを刺されました二つ、みなさん何を投げ入れたんですか?」 坂本「肝油ドロップだ。はっはっは!」 エイラ「サルミアッキだぞ」 バルクホルン「ちょ・・・調味料たくさんだ」 芳佳「納豆ですよ!」 サーニャ「鍋の焦げ・・・」 エーリカ「一番大きいの私かも」 バルクホルン「まさか、ハルトマンの手料理か?道理で昨日キッチンから異様な臭いがしていたのか」 エーリカ「てへっ」 ミーナ「料理禁止と言ったはずよ?エーリカ?」 エーリカ「ご・・・ごめん、賞味期限切れの食材があったからつい作ってみたくなっちゃった」 俺「だからあんなひどい味がしたのか」 エーリカ「ごめん、ついつい投げ入れちゃった」 俺「冗談じゃ済みませんよ・・・」 こうして二日目が終わった。ちなみにこの後エーリカはたっぷりお仕置きされたらしい。 三日目 俺「いやー今日はいい朝だ。そうだ。バルクホルンさんと戦うんだった。ちょっとカタログ見てみよう」 俺「じゃあミーナさんの所に行かないとな。そのあとにストライカーでも見ていくかな」 コンコン ミーナ「はい、どうぞ」 ガタッ 俺「俺伍長です。武器のカタログを見せていただきたいのですが」 ミーナ「ええ、いいわよ。トゥルーデと戦うの、頑張ってね」クスクス 俺「は・・・はい」ガクガクブルブル 俺「あったあった」 今は格納庫にいる。何をしているのかと言うと、ストライカーユニットを見ているのだ。あまりみてなかったからな。 シャーリー「おっ、俺じゃーん」 俺「あ、シャーリーさん。いったい何をしているんですか?」 シャーリー「ちょっとストライカーユニットを改造しているのさ。前音速を超えてね。ウンタラカンタラ・・・」 小30分経過 俺「へぁ・・・へぁ・・・」 ルッキーニ「ふぁ~あ、よく寝た。あ、シャーリーと俺だ!シャーリー!俺ー!」 シャーリー「おー!ルッキーニー!起きたかー!」 俺「おお・・・これが天からの助け船か」 ルッキーニ「とうっ」クルクル タスッ 俺「いや、ルッキーニさんはすごいですね。運動神経がよくて」 ルッキーニ「えへへー。それほどじゃないよー」 シャーリー「そうだ俺!お前のストライカー見てみていいか!あんなの見たことないんだ!」 俺「いいですよー」 ルッキーニ「うじゅー。私も見るー」 シャーリー「真っ黒だなー。まるで俺のために作られたみたいだ」 ルッキーニ「私もこんなの見たことないよー!」 シャーリー「おっ?なんだこれ?」 ルッキーニ「なんだなんだー?」 俺「えっ?なんですかなんですか?」 シャーリー「凄いぞこれ!武器を収納できる!」 ルッキーニ「一個だけじゃないよ!もっとある!えっと、八個ぐらい!」 俺「えええええ!?」 シャーリー「俺ーありがとうな。面白かったぞー」 ルッキーニ「ありがとうねー俺ー」 俺「面白い?なんで?」 シャーリー「ふんふんふーん」トテトテ ルッキーニ「ふふふふふーん」トテトテトテ 俺「なんだったんだろう。しかし八個も武器を収納できるのか。どうしようかな」 俺「部屋は落ち着くなー。さて、どれにしよう。お金は給料がたくさん入るらしいし、たくさん買おうかな」 パラパラパラ・・・ 俺「じゃぁ、これとこれとこれかな?これだけあれば多分医務室には送られないはず」 コンコン 芳佳「俺さーん。ご飯ですよー」 俺「あ、はい。わかりましたー」 俺「おー、納豆だ!」 シャーリー「・・・はぁ」 バルクホルン「・・・はぁ」 エーリカ「俺ー。昨日はごめんねー」 俺「いやいや、別にいいですよ」 エーリカ「ではこれから俺には試食を頼もうかな?」 俺「それはやめてください・・・」 ミーナ「だめよ、エーリカ。昨日だけで何個調理器具がなくなったと思ってるの五個よ。五個」 エーリカ「ごめーん」 俺「ははは・・・」ガクガクブルブル エーリカ「ごめーん」 俺「ははは・・・」ガクガクブルブル エイラ「俺ー、なんかごめんなー」 サーニャ「・・・ごめんなさい」 俺「いえいえ、いいですって」 俺「食った食ったー。ごちそうさまでした」 エイラ「何か俺が来てから凄い疲れるなー。また風呂にでも入るかなー」 エーリカ「私も入ろうかなー」 芳佳「あっ、私も入ろー」 バルクホルン「わ、私も入るか」 俺(昨日に続いて再びチャンス到来!) 以上で終わりです。支援してくださった皆様、ありがとうございました。長く続いてすみません。次の方、どうぞ。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/29049.html
つたえたいことばはただひとつ【登録タグ つ レタスP 初音ミク 曲】 作詞:レタスP 作曲:レタスP 編曲:レタスP 唄:初音ミク 曲紹介 ~二文字に込めた想い~ 簡単に言えない二文字の言葉。いつか言えるような相手が見つかるかな。 人気漫画をモチーフにした楽曲で構成されたコンセプトアルバム『クリエイトボックス Vol.1』収録曲。モチーフ漫画は『君に届け』。 動画を トミサカ氏 が手掛け、ベースを なちゅき氏 が、ピアノを GOTS氏 が演奏している。 歌詞 春風に舞う桜並木道で 出会い そして それが恋の始まりだった 生まれて初めてなんだよ こんなにも気持ちが高ぶるのは 夏の夜空 笑顔咲いた 誤解の解き方はわかってるから 事実は惹かれていたことです 間違ってはなかったはずなのに 何でだろう寂しくて涙が出る 忘れてしまおう そんなとき目の前に 笑顔の君 いつの日かこの気持ちが 君に届いてくれるのだろうか 大きなこの気持ちが 君に届く日まで 想いよ君に届け 君とのきっかけで少しずつ 私の周りが変わっていく 自分の気持ちは伝えなくちゃ 伝わらずに誤解がまた生まれる わからないから わかりあいたい 好きより大好きな人が出来たから 名前を呼ばれた日から 多分きっと恋に落ちたんだ いつの日かこの気持ちを 自分の言葉で 想いよ君に届け 真っ白な私の世界に 色をつけてくれた君に どんな言葉で伝えたら いいのかわからないけど 想いよ君に届け …君が大好きです コメント おおお! -- 名無しさん (2014-04-19 21 10 50) 歌詞めっちゃ好きです!! -- 朱莉(偽) (2014-05-14 10 57 18) 漫画「君に届け」がモチーフになってませんか?(*°▽°*) -- ああや (2014-09-20 11 09 25) 名前 コメント